皆様、こんにちは!
赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。
今回からは、会社法の「機関」に関する論点の解説に入りjます。
まずは、取締役会設置会社における株主総会決議事項の拡張と全員出席総会という2つの論点を整理していきます。
1.取締役会設置会社における株主総会の決定可能事項の拡張
まず、取締役会設置会社は、所有と経営の分離により、株主総会の決定事項は原則として法律の定めた事項に限定されています(295条2項)。
これは、取締役会非設置会社の株主総会とは対照的です。
一方で、取締役会設置会社は、定款によって株主総会の決議事項を拡張することができるのですが(295条2項)、その範囲はどこまで許容されるのかが問題となります。
この点、株主は会社の実質的所有者であるし、法定の事項は株主の立場から便宜的に定められた事項に過ぎないと考えられます。
よって、会社の本質・強行法規に反しない限りで定款による株主総会決定事項の拡張は原則として許されると考えて良いでしょう。
それでは、代表取締役の任免権を株主総会の決定事項とできるでしょうか。
そもそも、代表取締役の任免権が取締役会に与えられた(362条2項3号)趣旨は、取締役会による代表取締役の職務執行を十分に監督させるためであるとされています。
そうだとすれば、株主総会に代表取締役の任免権を与えると、取締役会の監督機能を害するとも考えられるでしょう。
しかし、取締役会は命令・監督権を用いて、代表取締役を監視・監督することはできます。
また、解任したい場合(362条2項2号)は解任を議題として株主総会を招集すればよいと考えれば足りるでしょう。
以上からすれば、362条2項3号は強行法規ではなく、代表取締役の任免権を株主総会に与えることは可能であると解釈して差し支えありません。
そして、この場合取締役会の任免権が失われるものと解釈されます。
2.全員出席総会
次に、中小企業等でよく実施される全員出席総会に関する論点を整理します。
まずは、招集通知の瑕疵を治癒できるかについてです。
招集手続(299条)が実施されておらず、かつ、招集手続の省略に事前の同意(300条参照)がない場合に、株主全員(代理人による出席も含む)が株主総会の開催に同意して出席することによって招集手続の瑕疵を治癒することができないのでしょうか。
そもそも、招集手続の趣旨は株主に株主総会への出席の機会を確保し、また、準備のための時間的余裕を与える点にあると考えられています。
そうだとすれば、株主全員が総会の開催に応じて出席している場合、その利益を放棄していると考えることができます。
したがって、このような場合には、招集手続がなくとも、瑕疵なく株主総会決議が成立すると解釈して良いでしょう。
ただし、代理人が出席している場合には、株主が議題を了知している必要があると思われます。
なお、取締役会設置会社においては、株主総会では招集通知に記載された事項しか決議するこができませんが(309条5項)、議決権を有する株主全員が株主総会に出席しており、かつ株主全員の同意が得られれば、招集通知に記載されていなかった事項についても決議することが可能となります。
3.全員出席総会がなされたが、取締役が招集・出席されなかった場合
では、ややイレギュラーな問題ですが、全員出席総会がなされたが、取締役が招集・出席されなかった場合、その決議の効力はどうなるのでしょうか。
そもそも、株主総会は株主によって構成されるが完全な自足性を持った機関ではなく、その原則的招集権(296条3項)や発案権(298条1項・4項)は原則として株式会社の執行機関たる取締役(会)が有しているものと理解されています。
そうだとすれば、株主総会への出席は取締役の義務だけではなく権利でもあるといえるでしょう。
したがって、取締役に株主総会開催の通知をせず、あるいは取締役の出席を不当に拒絶した全出席総会は、その決議に取消事由があると解すべきです。
以上で、株主総会の取締役会設置会社における決議事項の拡張と全員出席総会に関する論点の整理でした。
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