弁護士葛巻のコラム

2017.10.27更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回のコラムは、中小企業で多く用いられる、譲渡制限株式について、会社の承認がないままに上とされた場合、その効力は有効か?

誰を株主と扱えばよいか等について解説します。

 

1.承認なき譲渡制限株式の譲渡の効力

譲渡制限株式とは、譲渡の際に、会社の承認を必要とする種類株式です。

それでは、会社の承認(139条1項)がない場合、株式譲渡の効力をいかに解すべきでしょうか。

そもそも、株式に譲渡制限を付した目的は、会社に対する関係で譲渡を無効とし、会社にとって好ましくない者が株主になるのを阻止する点にあるとされています。

また、会社法137条1項、138条2号は、譲受人から承認請求することを認めており、これはすなわち、譲渡当事者間においては譲渡が有効であることを前提とされているのです。

したがって、会社との関係では無効であるとせざるを得ないものの、譲渡当事者間では有効であると解すべきです。

 

2.会社は誰を株主として扱えばよいか

では、その場合、会社は譲渡人、譲受人いずれを株主として取り扱うべきでしょうか。

この点、会社との関係で効力を生じないことの論理的帰結としては、譲渡人を株主として取り扱うべきとするのが自然でしょう。

また、株主権行使の空白発生を防ぐべきとの要請もあります。

したがって、会社は譲渡人を株主と取り扱うべき義務を負うと解すべきです。

なお、会社の同意があっても譲受人を株主として扱うことはできないとされています。

ここで、名義書換未了の株主の取り扱いについて、会社法130条2項・1項の趣旨は、会社と株主との関係を集団的・画一的に処理する会社の事務処理の便宜を図ることにあることから、会社のリスクで名義書換未了の株主を株主として扱うことは許されるものとされていることから、上記結論との整合性が問題となり得ます。

しかし、これが許されるのは株式譲渡自体が会社との関係でも有効であることが前提です。

そのため、会社の承認なき譲渡制限株式の譲渡のように、株式譲渡自体が会社との関係で効力を生じていなければ、会社が譲受人を株主と扱うことはできないものと解されます。

 

3.一人株主の全株式の譲渡の場合

それでは、一人株主が全株式を譲渡した場合はどうなるのでしょうか。

思うに、譲渡制限制度の趣旨は会社にとって好ましくない者が株主となることを防止し、他の株主の利益を保護することにあります。

そうだとすれば、一人株主が全株式を譲渡した場合、他の株主の利益保護が問題となる余地は全くありません。

したがって、一人株主の場合には、会社の承認は不要であると解されます。

なお、株主が二人だけの場合でも理論上この類型と同様に考えることが可能です。

株主が二人だけであるということは、つまり、その二人の株主が譲渡人と譲受人となっているということであり、会社にとって好ましくない者が株主になるおそれがないからです。

 

4.株主間での譲渡の場合

では、株主間での譲渡の場合はどうなるのでしょうか?(この場合、全株主が三人以上であるとする)

この場合、原則として、会社の承認がない以上、当該譲渡は会社に対抗できないのは同様です。

そして、譲渡制限制度の趣旨は会社にとって好ましくない者が株主となることを防止し、他の株主の利益を保護することにあるが、株主間における譲渡の場合には、会社にとって好ましくない者が新たに株主になるという問題は生じません。

そうだとすれば、株主間での合意に基づく株式の譲渡は有効であり、定款所定の承認を欠いても、会社に対抗することができるとも考えることができそうです。

しかし、個々の株主がどのような割合で株式を有するかという点についても、株主相互の関係にとって非常に重要であるといえます。

そのため、株主相互の株式の譲渡についても、定款所定の承認を要するものと解すべきです。

したがって、かかる譲渡を有効なものとして会社に対抗するためには、株主全員の間での合意を要すると考えるべきです。

この場合に限り、定款所定の承認がなくても譲渡は有効であり、会社に対抗することができると解する。

 

5.145条1号の見なし承認決議について

補論として、会社法145条1号の見なし承認決議の運用等について解説します。

本条の趣旨は、そもそも株式は譲渡自由が原則である(127条)以上、会社が譲渡承認請求に対する返答を意図的に遅滞することで、譲渡承認請求者による株式譲渡が不可能となる事態を防ぐことで、譲渡承認請求者に投下資本の回収を保障する点にあります。

そのため、仮に、会社が情報共有をしておらず、本件株式譲渡を承認するか否かについて検討する機会が失われていたとしても、145条1号は適用するべきでしょう。

もっとも、譲渡制限制度は株主の個性を重視する会社形態を考慮したものであるから、従来の株主保護を譲受人よりも優先させるべきです。

そのため、形式的に145条1号に当たる場合でも、従来の株主の地位を不当に脅かすような場合には、信義則上、同条の適用が否定される、とする見解もあるのでこの点には注意が必要です。

 

以上が、会社の承認なき譲渡制限株式の譲渡の効力でした。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2017.10.20更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊で弁護士をやっております葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回は、会社法106条の株主の共有について解説しようと思います。

実務上、株式の共有化が発生してしまうのは、高齢の株主が亡くなって相続が発生した場合、被相続人が有していた株式が相続人の共有となるのです。

実際上、よく起こりうる事例ですので、今回のテーマに選びました。

会社法106条では、共有株主の権利行使者を指定しなければ、共有株主の権利行使ができない定めとなっています。

そこで、まずは、どのようにして共有株主の権利行使者を定めるべきか、共有株主の権利行使の方法について述べたいと思います。

 

1.株式共有(106条)-共有株主の権利行使の方法

まず、株式が共同相続された場合、株式は自益権のみならず、共益権をも含むから、可分債権(民法427条)とみることはできません。

そのため、株式は共同相続人の準共有(民法264条)となるものと解釈されています。

そして、株式の共有者は会社に権利行使者を指定して通知する必要があるところ(106条本文)、権利行使者はどのように定めるべきでしょうか。

この点、共有者全員一致(同意)を要求するという見解も有力ではありますが、会社運営に支障をきたすおそれがあり、会社の事務処理の便宜を考慮したという同条の趣旨を没却してしまいます。

また、権利行使者の指定は共有物の管理行為に該当する(民法252条)と解釈するのが素直です。

したがって、共有部得tの管理行為と同様、共有持分の過半数をもって決すべきであると解すべきでしょう。

判例も同様の見解に立っています。

ここで、株式の準共有状態は遺産分割が終わるまでの過渡的なものであるから、共同相続人は議決権行使方法につき事前に協議する機会が全員に与えられることが必要となります。

よって、一部の不参加がやむを得ない事情による場合、参加の機会を与えても指定の結果が異なることは考え難い場合等に限り、共同相続人全員による事前協議を欠いた権利行使者の指定は有効となると解釈できますが、他方で、そのような事情が認められず、全く協議せずに権利行使者を指定し、議決権を行使した場合には、権利の濫用として、その権利行使は許されないと考えるべきでしょう。

もっとも、会計帳簿閲覧請求権の行使のみを行うなど、他の共有株主の潜在的持分を害するおそれがない場合には、協議を経ていなくても、権利濫用に当たらないと解することもできます。

なお、事前協議によって定められた権利行使者は自己の判断で株主としての権利を行使することができます。

そして、株主の共有者間で権利行使に関しての内部的合意があったとしても、会社に対してこれを対抗することはできないとされています。

しかし、共有持分の過半数の決定があれば、権利行使者は各共有者の指示に従い議決権を行使する(各共有者の指示が異なるときは不統一行使(313条)をする)義務を共有者の内部関係上負うことになります。

そして、権利行使者が共有者の指示に反した議決権行使をしたことにつき会社が悪意の場合には、そのことをもって会社に対抗することができる(当該議決権行使は違法であり、決議は取消事由を帯びる)と解すべきです。
 

2.相続と株主名簿の書換え

共同相続人が相続株式の権利を行使する前提として、相続による株式の移転を会社に対抗しるために株主名簿の名義書換(130条1項)を要するのでしょうか。

株式の譲渡等の場合、譲受人は株主名簿の名義書換が完了しなければ、自己が株主であることを会社に対して対抗(主張)することができません。

しかし、130条1項は株式の「譲渡」の対抗要件を定めるにすぎず、相続その他の一般承継とは無関係な規定です。

また、相続人は被相続人の法的地位を包括的に承継するのだから、「名義株主」という地位をも承継すると解すべきです。

よって、相続による株式の移転は名義書換をしなくても会社に対抗することができると考えるべきでしょう。

このように考えなければ、基準日後(124条)に相続が生じた場合、相続人は議決権を会社の同意を得なければ(124条4項)行使できなくなり、また、その他の権利もおよそ認められなくなってしまいます。

株主の意思によって左右できない「死亡」の時期によってこのような不都合が生じるのは妥当ではないでしょう。

また、名義株主(被相続人)は既に死亡しているから、譲渡と異なり、名義株主と承継株主との間で権利行使の重複が生じるおそれもありません。

なお、この見解に立つ場合、株主総会への出席・議決権の行使のような、会社法の免責規定がない場合の処理をいかにするかが問題となります。

この点、相続人が株主総会に出席して議決権を行使するには自己の権利を証明しなければならず、そのような証明をしない相続人に対して、会社が株主総会の出席や議決権行使を拒んだとしても、決議は違法の瑕疵(831条1項1号)を帯びることはないと解すべきでしょう。
 

3.106条ただし書の適用範囲

参考:会社法106条「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。」

共有者の過半数に基づく決定がない場合に、会社の方から権利行使を認めることができるのでしょうか。

確かに、上記、106条ただし書を文言通り解釈するとこれを肯定できそうです。

しかし、権利行使者の指定は共有物の管理に属する事項であり、それについての決定は共有者内部の問題であり、会社が勝手にその関係を変更することは許されないでしょう。

また、仮にこの点を肯定すると、会社の恣意的な運用を許すことになります。

したがって、共有株式の議決権行使の方法を共有持分の過半数による決定を要すると解するのであれば、各共有者が議決権を行使することもまた、共有持分の過半数の決定がない限り、たとえ会社が同意しても行うことはできないと解すべきです。

結果として、各共有者が議決権を行使することもまた、共有持分の過半数の決定がない限り、たとえ会社が同意しても(106条ただし書が適用されないため)行うことができません。

逆に言うと、共有持分の過半数の決定があれば、会社の同意を得て各共有者が議決権を行使することができることになります。

また、議決権とは異なり、違法行為是正のための株主訴権(828条・831条等)などは、保存行為(民法252条ただし書)の性格をもち、本来は共有者1人により行使できるものであり、会社法106条は会社の事務処理上の便宜のために権利行使者による行使を要求しているに過ぎないから、会社が同意すれば、共有持分の過半数の同意がなくても各共有者が訴えを提起できると解釈されるでしょう。
 

4.訴訟提起における権利行使者の通知

権利行使者が未確定にもかかわらず、ある共有者の権利行使を会社が認め(106条ただし書)不当な決議が成立した場合(前述のようにこのような権利行使は106条ただし書に反し、取消事由を構成する)、他の相続人は株主総会決議取消訴訟等を提起できるのでしょうか。

この点、訴訟提起も会社に対する権利行使の一種であり、実質的にみても会社運営の便宜を図った同条の趣旨が及ぶものと解されます。

したがって、この場合も106条本文に基づき、権利行使者の指定・通知をなす必要があり、これがない場合は、会社の同意(106条ただし書)がなされない限り、原告適格を欠くこととなります。
しかしながら、共有株式が発行済株式の全部又は過半数を占めているため、本来成立するはずのない決議が成立したような場合には、会社は一方で権利行使者の指定・通知をしなければ成立し得ない株主総会決議の成立を主張しつつ、他方で、権利行使者の指定・通知がないことを理由にこれを争うことは、防御権の濫用もしくは信義則違反として、原告適格が肯定される特段の事情があるといえると思われます。

 

以上で、株主共有に関する種々の論点の解説でした。

株式共有、相続、事業承継、企業法務等の法律問題は弁護士葛巻にお任せください。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2017.10.20更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊で弁護士をやっております葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回は、会社法106条の株主の共有について解説しようと思います。

実務上、株式の共有化が発生してしまうのは、高齢の株主が亡くなって相続が発生した場合、被相続人が有していた株式が相続人の共有となるのです。

実際上、よく起こりうる事例ですので、今回のテーマに選びました。

会社法106条では、共有株主の権利行使者を指定しなければ、共有株主の権利行使ができない定めとなっています。

そこで、まずは、どのようにして共有株主の権利行使者を定めるべきか、共有株主の権利行使の方法について述べたいと思います。

 

1.株式共有(106条)-共有株主の権利行使の方法

まず、株式が共同相続された場合、株式は自益権のみならず、共益権をも含むから、可分債権(民法427条)とみることはできません。

そのため、株式は共同相続人の準共有(民法264条)となるものと解釈されています。

そして、株式の共有者は会社に権利行使者を指定して通知する必要があるところ(106条本文)、権利行使者はどのように定めるべきでしょうか。

この点、共有者全員一致(同意)を要求するという見解も有力ではありますが、会社運営に支障をきたすおそれがあり、会社の事務処理の便宜を考慮したという同条の趣旨を没却してしまいます。

また、権利行使者の指定は共有物の管理行為に該当する(民法252条)と解釈するのが素直です。

したがって、共有部得tの管理行為と同様、共有持分の過半数をもって決すべきであると解すべきでしょう。

判例も同様の見解に立っています。

ここで、株式の準共有状態は遺産分割が終わるまでの過渡的なものであるから、共同相続人は議決権行使方法につき事前に協議する機会が全員に与えられることが必要となります。

よって、一部の不参加がやむを得ない事情による場合、参加の機会を与えても指定の結果が異なることは考え難い場合等に限り、共同相続人全員による事前協議を欠いた権利行使者の指定は有効となると解釈できますが、他方で、そのような事情が認められず、全く協議せずに権利行使者を指定し、議決権を行使した場合には、権利の濫用として、その権利行使は許されないと考えるべきでしょう。

もっとも、会計帳簿閲覧請求権の行使のみを行うなど、他の共有株主の潜在的持分を害するおそれがない場合には、協議を経ていなくても、権利濫用に当たらないと解することもできます。

なお、事前協議によって定められた権利行使者は自己の判断で株主としての権利を行使することができます。

そして、株主の共有者間で権利行使に関しての内部的合意があったとしても、会社に対してこれを対抗することはできないとされています。

しかし、共有持分の過半数の決定があれば、権利行使者は各共有者の指示に従い議決権を行使する(各共有者の指示が異なるときは不統一行使(313条)をする)義務を共有者の内部関係上負うことになります。

そして、権利行使者が共有者の指示に反した議決権行使をしたことにつき会社が悪意の場合には、そのことをもって会社に対抗することができる(当該議決権行使は違法であり、決議は取消事由を帯びる)と解すべきです。
 

2.相続と株主名簿の書換え

共同相続人が相続株式の権利を行使する前提として、相続による株式の移転を会社に対抗しるために株主名簿の名義書換(130条1項)を要するのでしょうか。

株式の譲渡等の場合、譲受人は株主名簿の名義書換が完了しなければ、自己が株主であることを会社に対して対抗(主張)することができません。

しかし、130条1項は株式の「譲渡」の対抗要件を定めるにすぎず、相続その他の一般承継とは無関係な規定です。

また、相続人は被相続人の法的地位を包括的に承継するのだから、「名義株主」という地位をも承継すると解すべきです。

よって、相続による株式の移転は名義書換をしなくても会社に対抗することができると考えるべきでしょう。

このように考えなければ、基準日後(124条)に相続が生じた場合、相続人は議決権を会社の同意を得なければ(124条4項)行使できなくなり、また、その他の権利もおよそ認められなくなってしまいます。

株主の意思によって左右できない「死亡」の時期によってこのような不都合が生じるのは妥当ではないでしょう。

また、名義株主(被相続人)は既に死亡しているから、譲渡と異なり、名義株主と承継株主との間で権利行使の重複が生じるおそれもありません。

なお、この見解に立つ場合、株主総会への出席・議決権の行使のような、会社法の免責規定がない場合の処理をいかにするかが問題となります。

この点、相続人が株主総会に出席して議決権を行使するには自己の権利を証明しなければならず、そのような証明をしない相続人に対して、会社が株主総会の出席や議決権行使を拒んだとしても、決議は違法の瑕疵(831条1項1号)を帯びることはないと解すべきでしょう。
 

3.106条ただし書の適用範囲

参考:会社法106条「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。」

共有者の過半数に基づく決定がない場合に、会社の方から権利行使を認めることができるのでしょうか。

確かに、上記、106条ただし書を文言通り解釈するとこれを肯定できそうです。

しかし、権利行使者の指定は共有物の管理に属する事項であり、それについての決定は共有者内部の問題であり、会社が勝手にその関係を変更することは許されないでしょう。

また、仮にこの点を肯定すると、会社の恣意的な運用を許すことになります。

したがって、共有株式の議決権行使の方法を共有持分の過半数による決定を要すると解するのであれば、各共有者が議決権を行使することもまた、共有持分の過半数の決定がない限り、たとえ会社が同意しても行うことはできないと解すべきです。

結果として、各共有者が議決権を行使することもまた、共有持分の過半数の決定がない限り、たとえ会社が同意しても(106条ただし書が適用されないため)行うことができません。

逆に言うと、共有持分の過半数の決定があれば、会社の同意を得て各共有者が議決権を行使することができることになります。

また、議決権とは異なり、違法行為是正のための株主訴権(828条・831条等)などは、保存行為(民法252条ただし書)の性格をもち、本来は共有者1人により行使できるものであり、会社法106条は会社の事務処理上の便宜のために権利行使者による行使を要求しているに過ぎないから、会社が同意すれば、共有持分の過半数の同意がなくても各共有者が訴えを提起できると解釈されるでしょう。
 

4.訴訟提起における権利行使者の通知

権利行使者が未確定にもかかわらず、ある共有者の権利行使を会社が認め(106条ただし書)不当な決議が成立した場合(前述のようにこのような権利行使は106条ただし書に反し、取消事由を構成する)、他の相続人は株主総会決議取消訴訟等を提起できるのでしょうか。

この点、訴訟提起も会社に対する権利行使の一種であり、実質的にみても会社運営の便宜を図った同条の趣旨が及ぶものと解されます。

したがって、この場合も106条本文に基づき、権利行使者の指定・通知をなす必要があり、これがない場合は、会社の同意(106条ただし書)がなされない限り、原告適格を欠くこととなります。
しかしながら、共有株式が発行済株式の全部又は過半数を占めているため、本来成立するはずのない決議が成立したような場合には、会社は一方で権利行使者の指定・通知をしなければ成立し得ない株主総会決議の成立を主張しつつ、他方で、権利行使者の指定・通知がないことを理由にこれを争うことは、防御権の濫用もしくは信義則違反として、原告適格が肯定される特段の事情があるといえると思われます。

 

以上で、株主共有に関する種々の論点の解説でした。

株式共有、相続、事業承継、企業法務等の法律問題は弁護士葛巻にお任せください。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2017.10.06更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

会社法の論点シリーズですが、今回は設立中の会社についてです。

会社はきちんとした設立手続を経て法人格を取得するまでに、ある程度の時間がかかりますし、会社が設立されるまでに様々な取引行為が行われる場合があります。

今回は、そのような場合の法律関係について解説しようと思います。

 

1.設立中の会社の意義

まず、設立中の会社とはどのような概念なのでしょうか?

この点、法人格が付与されていない段階においても、会社の社団形成自体は徐々に行われており、一定の段階で権利能力なき社団たる設立中の会社の成立を認めることができるものと解されています。

そうだとすれば、設立中の会社と成立後の会社は実質的に同一の存在であるとみるべきであるから、発起人が設立中の会社の機関として行った設立のために必要な行為の効果は、会社成立前においても実質的には設立中の会社に帰属しているものと解されます。

したがって、このような会社設立前の発起人が行った法律行為は、会社の成立とともに形式的にも当然に成立後の会社に帰属するものと解釈されています。
 

2.設立中の会社の発起人の権限

では、設立中の発起人の権限はどのように解釈されるのでしょうか?

まず、設立中の会社は本質において成立後の会社と同一であるから、設立中の会社の機関として発起人が権限内で行った行為による権利義務は、特段の移転行為を要せずに当然に成立後の会社に承継されるものと理解されています。

それでは、設立中の会社の発起人の権限の範囲をいかに解するべきでしょうか。

そもそも、設立中の会社は会社の設立を目的とするから、会社設立のために直接必要な行為まで可能だとみなければならないでしょう。

よって、設立中の会社の発起人の権限は会社設立のために法律上・経済上必要な行為まで及ぶと考えるべきです。

もっとも、会社の財産的基礎を確保すべく、定款に記載がある範囲内で発起人の権限を認めるべきしょう。

以下、個別の行為毎に詳しく見ていきます。

➀財産引受け

財産引受けは本来権限の範囲外の行為であるので、定款への記載等を要件として法が特に認めた行為であるといえます(会社法28条2号)。

※なお、このような定款への記載を要件として法が特に認めた事項を変態設立事項といいます。

よって、定款に記載がなければ、無効となるの原則です。

では、会社から追認することは可能でしょうか。会社から追認することができれば、事後的に財産引受けも有効となり得るということとなります。

そもそも、会社法28条2号は開業準備行為である財産引受けについて、例外的に発起人の権限を認めたものです。

そうだとすれば、定款に記載がない場合には追認も認めるべきではないでしょう。

実質的に考えても、仮に追認が可能であるとすると、法の規定を守って、わざわざ時間と費用を費やして、財産引受けにつき定款記載・検査役の調査を行う者はいなくなり、制度が空洞化してしまい妥当ではないと言わざるを得ません。

よって、会社からの追認はできず、定款に記載のない財産引受けは無効であると解すべきです。

もっとも、取引後、長時間が経過した後に会社が無効主張をするなど、信義則に反する特段の事情が認められる場合もあるので、この点は注意が必要です。

また、無効とされた場合の、相手方の保護は、発起人が無権代理人に類似した地位に立つため、民法117条の類推適用によって図られることになります。

なお、発起人が将来成立する会社の代表者名義で取引をした場合、一般に会社と取引をする者が会社登記簿を調査しなかったとしても、これをもって直ちに過失があるとまではいえません。

しかし、設立中の会社の名で取引がなされた場合には、相手方は会社が未成立であることを知っているので、発起人が無権限であることを知り、又は過失によって知らなかったものとして、無権代理人の責任は否定される(民法117条2項)でしょう。

②開業準備行為                      

財産引受け以外の開業準備行為については、発起人の権限の範囲外です。

また、財産引受けと異なり、他の開業準備行為に関しては会社法に定めがないから、絶対的に無効とせざるを得ません。

もっとも、相手方としては、会社という「本人」が実在しない場合と同視でき、民法117条の類推適用により、費やした費用を発起人に対し賠償請求することができるでしょう。

③設立費用

設立費用は会社設立のために必要な行為であるから、当然発起人の権限内の行為です。

そして、判例は、定款に記載された額の限度内において、発起人のした取引の効果は成立後の会社に帰属し、相手方は会社に対してのみ支払いを請求できる(発起人には請求できない)としています。

そうすると、行為の時系列によって効果が帰属するか否かが区別されることになります(限度額を超える場合は、残額を発起人等に請求する)。

この場合、いずれの取引が先になされたか不明な場合の処理に窮しますが、そうした場合、債務の額に応じて案分した範囲で会社への請求を認めるとの見解があります。

もっとも、会社財産確保の観点から、定款記載等があっても、取引の相手方に支払責任を負うのは発起人のみであり、発起人は定款記載の額を限度として成立後の会社に求償できるとの見解も有力です。

 

※発起人組合と開業準備行為・事業行為

複数の発起人間の合意は民法上の組合契約です発起人組合)。

そして、発起人組合の目的は会社の設立であるが、発起人全員の合意があれば、開業準備行為や事業行為もその目的に含めることができます。

したがって、定款に記載のない財産引受け等の開業準備行為や、さらには事業行為など、設立中の会社の執行機関としては権限外の行為でも、発起人組合の組合員としては権限内の行為であるとものがあり得ます。

その場合、組合を代理する権限を有する者がした行為の効果は、発起人組合に帰属し、発起人全員が責任を負うことになります。
なお、発起人組合の行為か否かを、行為者の肩書により形式的に判断すると、設立中の会社の機関としては権限外の行為だが発起人組合の目的の範囲内となる行為が、組合の行為とされない可能性が生じ得ます。

そこで、肩書表示を重視せず、当該行為が、発起人の権限の範囲外だが発起人組合の目的の範囲内に含まれる場合、その効果は発起人組合に帰属し、発起人全員が責任を負うと解すべきでしょう。

 

以上で、設立中の会社についての解説でした。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2017.10.06更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

会社法の論点シリーズですが、今回は設立中の会社についてです。

会社はきちんとした設立手続を経て法人格を取得するまでに、ある程度の時間がかかりますし、会社が設立されるまでに様々な取引行為が行われる場合があります。

今回は、そのような場合の法律関係について解説しようと思います。

 

1.設立中の会社の意義

まず、設立中の会社とはどのような概念なのでしょうか?

この点、法人格が付与されていない段階においても、会社の社団形成自体は徐々に行われており、一定の段階で権利能力なき社団たる設立中の会社の成立を認めることができるものと解されています。

そうだとすれば、設立中の会社と成立後の会社は実質的に同一の存在であるとみるべきであるから、発起人が設立中の会社の機関として行った設立のために必要な行為の効果は、会社成立前においても実質的には設立中の会社に帰属しているものと解されます。

したがって、このような会社設立前の発起人が行った法律行為は、会社の成立とともに形式的にも当然に成立後の会社に帰属するものと解釈されています。
 

2.設立中の会社の発起人の権限

では、設立中の発起人の権限はどのように解釈されるのでしょうか?

まず、設立中の会社は本質において成立後の会社と同一であるから、設立中の会社の機関として発起人が権限内で行った行為による権利義務は、特段の移転行為を要せずに当然に成立後の会社に承継されるものと理解されています。

それでは、設立中の会社の発起人の権限の範囲をいかに解するべきでしょうか。

そもそも、設立中の会社は会社の設立を目的とするから、会社設立のために直接必要な行為まで可能だとみなければならないでしょう。

よって、設立中の会社の発起人の権限は会社設立のために法律上・経済上必要な行為まで及ぶと考えるべきです。

もっとも、会社の財産的基礎を確保すべく、定款に記載がある範囲内で発起人の権限を認めるべきしょう。

以下、個別の行為毎に詳しく見ていきます。

➀財産引受け

財産引受けは本来権限の範囲外の行為であるので、定款への記載等を要件として法が特に認めた行為であるといえます(会社法28条2号)。

※なお、このような定款への記載を要件として法が特に認めた事項を変態設立事項といいます。

よって、定款に記載がなければ、無効となるの原則です。

では、会社から追認することは可能でしょうか。会社から追認することができれば、事後的に財産引受けも有効となり得るということとなります。

そもそも、会社法28条2号は開業準備行為である財産引受けについて、例外的に発起人の権限を認めたものです。

そうだとすれば、定款に記載がない場合には追認も認めるべきではないでしょう。

実質的に考えても、仮に追認が可能であるとすると、法の規定を守って、わざわざ時間と費用を費やして、財産引受けにつき定款記載・検査役の調査を行う者はいなくなり、制度が空洞化してしまい妥当ではないと言わざるを得ません。

よって、会社からの追認はできず、定款に記載のない財産引受けは無効であると解すべきです。

もっとも、取引後、長時間が経過した後に会社が無効主張をするなど、信義則に反する特段の事情が認められる場合もあるので、この点は注意が必要です。

また、無効とされた場合の、相手方の保護は、発起人が無権代理人に類似した地位に立つため、民法117条の類推適用によって図られることになります。

なお、発起人が将来成立する会社の代表者名義で取引をした場合、一般に会社と取引をする者が会社登記簿を調査しなかったとしても、これをもって直ちに過失があるとまではいえません。

しかし、設立中の会社の名で取引がなされた場合には、相手方は会社が未成立であることを知っているので、発起人が無権限であることを知り、又は過失によって知らなかったものとして、無権代理人の責任は否定される(民法117条2項)でしょう。

②開業準備行為                      

財産引受け以外の開業準備行為については、発起人の権限の範囲外です。

また、財産引受けと異なり、他の開業準備行為に関しては会社法に定めがないから、絶対的に無効とせざるを得ません。

もっとも、相手方としては、会社という「本人」が実在しない場合と同視でき、民法117条の類推適用により、費やした費用を発起人に対し賠償請求することができるでしょう。

③設立費用

設立費用は会社設立のために必要な行為であるから、当然発起人の権限内の行為です。

そして、判例は、定款に記載された額の限度内において、発起人のした取引の効果は成立後の会社に帰属し、相手方は会社に対してのみ支払いを請求できる(発起人には請求できない)としています。

そうすると、行為の時系列によって効果が帰属するか否かが区別されることになります(限度額を超える場合は、残額を発起人等に請求する)。

この場合、いずれの取引が先になされたか不明な場合の処理に窮しますが、そうした場合、債務の額に応じて案分した範囲で会社への請求を認めるとの見解があります。

もっとも、会社財産確保の観点から、定款記載等があっても、取引の相手方に支払責任を負うのは発起人のみであり、発起人は定款記載の額を限度として成立後の会社に求償できるとの見解も有力です。

 

※発起人組合と開業準備行為・事業行為

複数の発起人間の合意は民法上の組合契約です発起人組合)。

そして、発起人組合の目的は会社の設立であるが、発起人全員の合意があれば、開業準備行為や事業行為もその目的に含めることができます。

したがって、定款に記載のない財産引受け等の開業準備行為や、さらには事業行為など、設立中の会社の執行機関としては権限外の行為でも、発起人組合の組合員としては権限内の行為であるとものがあり得ます。

その場合、組合を代理する権限を有する者がした行為の効果は、発起人組合に帰属し、発起人全員が責任を負うことになります。
なお、発起人組合の行為か否かを、行為者の肩書により形式的に判断すると、設立中の会社の機関としては権限外の行為だが発起人組合の目的の範囲内となる行為が、組合の行為とされない可能性が生じ得ます。

そこで、肩書表示を重視せず、当該行為が、発起人の権限の範囲外だが発起人組合の目的の範囲内に含まれる場合、その効果は発起人組合に帰属し、発起人全員が責任を負うと解すべきでしょう。

 

以上で、設立中の会社についての解説でした。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

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