弁護士葛巻のコラム

2018.03.22更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまきみずき)です。

先日、取材を受けましたので、よろしければインタビュー記事をご覧ください。

下記リンクからアクセスできます。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2018.03.20更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回は、委任状にまつわる法的規制に関する論点を解説します。

 

1.委任状勧誘と利益供与

まず、会社から株主に、会社提案の議案に賛同するよう働きかけ、何らかの利益の供与があった場合に株主総会決議の取消原因を構成するのでしょうか。

この点、利益供与は、現行法上厳しく制限されている(120条、970条)以上、原則として全て禁止されるべきです。

もっとも、会社の慣行上の必要性から、形式的には利益供与に当たっても、それを一律に違法と断じてしまうと会社にとってあまりに不都合です。

そのため、例外的に違法とならない場合を認めざるを得ないのも実情ですので、どのような場合に違法となり、どのような場合に違法とならないのかの線引きが問題となるのです。

そこで、一般的な見解では、

①株主の権利の行使に影響を及ぼす恐れのない正当な目的に基づき供与される場合で(目的の正当性)、かつ、

②供与額が社会通念上許容される範囲の物であり(金額の相当性)、

③供与総額も会社の財産的基礎に影響を及ぼさないものであるとき(総額の相当性)

には許容される余地があると解釈されています。
 

2.委任状勧誘規制違反と株主総会決議取消事由

まず、 一般に書面投票の場合、株主総会参考書類の不交付、様式不備の議決権行使書面の使用等は、招集手続又は決議方法の法令違反として決議取消事由となります。

これに対し、議決権の代理行使の勧誘は決議前の事実行為であって決議の方法ではなく、勧誘府令は決議方法を規定した「法令」(831条1項1号)ではないので、委任状勧誘規制違反が直ちに決議取消事由にはならないと解されています。

しかしながら、会社が賛否欄の記載を欠く委任状用紙を用いたり、参考書類に重要な不実記載があったような場合等、委任状勧誘規制違反の結果、決議が著しく不公正と認められるときは、決議取消原因となります。

また、書面決議を義務付けられた会社(298条2項)がそれに代えて行う委任状勧誘(298条2項ただし書・会社則64条)については、委任状勧誘規制違反は、決議方法の「法令」違反となるため注意が必要です。

ただし、第三者が委任状勧誘規制に反した場合には、決議取消事由と解することはできません。
 

3.委任状勧誘規制違反と委任契約

委任状勧誘規制の違反が、委任契約の効力に影響を及ぼすのでしょうか?

委任状勧誘規制違反が委任契約の効力に影響を及ぼすと考えると、議決権行使が無権代理として無効(民法113条1項)となり得ます。

この場合、無効な議決権数を参入して決議の成否を判断したことは決議方法の法令違反として(309条参照)、決議取消事由となるでしょう。

しかし、委任状勧誘規制違反の勧誘がなされても、委任状勧誘規制は取締法規であり、委任状勧誘に係る効力規定でないことから、勧誘行為及び代理人の議決権行使自体は私法上有効であると思われます(会社提案の賛否の記載は招集通知を受けるまで株主は了知し得ないため、その記載を欠いても勧誘府令43条には反しない)。

もっとも、賛否の記載のある委任状の指示に反して代理行使がなされた場合、当該記載が代理権の客観的範囲を画するものであるから、このような議決権行使は無権代理として無効となります。

 

4.株主総会途中で届いた委任状による議決権行使の可否

ところで、株主総会途中で届いた委任状による議決権行使は認められるのでしょうか。

委任状の提出時期については明文の規定がないため問題となります。

そもそも、会社法310条1項の趣旨は、株主総会に出席しない株主に対し議決権を行使する機会を確保し、株主の意思をできるだけ会社経営には反映させる点にあります。

そのため、株主の議決権行使の機会をできるだけ確保すべく、決議時までに委任の意思が明らかになればよいものと解すべきでしょう。

したがって、株主総会途中での委任状による議決権行使も、決議前であれば許されると解釈されています。

 

以上で、委任状にまつわる諸論点の解説でした。

株主総会の指・議事録作成や会社法コンプライアンス企業法務一般に関するご相談は、弁護士葛巻にお任せ下さい。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2018.03.02更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回は、株主総会決議の取消事由について、若干の解説を行います。

株主総会決議に何らかの瑕疵があった場合、その決議は事後的に取り消すことが可能です(会社法第831条1項)。

そこで、今回のコラムではよく教科書等で取り上げられることの多い、株主総会決議の瑕疵・決議取消訴訟に関する論点を解説していこうと思います。

 

1.取締役の説明義務(314条)

まず、取締役は、株主総会において、株主からの質問に対して一定の説明をしなければなりません(314条)。

しかし、取締役が十分な回答・説明をせずに、かかる説明責任を果たしていないと思われる場合、株主総会決議を取り消すことが可能になるわけです。

ただし、取締役にかかる説明義務が生じるのはどのような場合を指すのか、取締役に説明義務が課されるとして、その説明の程度はどの程度の説明をすればよいのかが問題となります。

⑴事前の質問状に一括して回答した場合

まず、取締役が、株主から事前に提出されている質問状に対して、一括して回答した場合、取締役に説明義務違反を問えるのか、そもそも取締役に説明義務が生じるのでしょうか?

この場合には、取締役の説明義務違反は生じないものと解釈されています。

なぜなら、314条は株主総会の場で具体的な質問がなされた場合の規定だからです。

したがって、取締役に説明義務が生じるのは、株主総会の議場の場で株主から質問がなされた場合に限られることになります。

⑵説明義務の程度

それでは、議場において株主から質問がなされた場合、取締役が負う説明義務の程度はどのようなものなのでしょうか。

思うに、説明義務の履行といえども、全ての質問にすべからく回答しなければならないものではなく、株主が議題を合理的に判断するのに客観的に必要な範囲での説明をすれば足りるものと解するのが合理的でしょう。

実際上、全ての質問に対し、詳細に回答するのは現実的でないケースもありますし、このように解釈してしまうと株主の嫌がらせ的な質問を助長する結果に繋がりかねません。

したがって、説明義務の程度は、それが株主総会決議事項とされた趣旨、決議事項の内容、質問事項との関連の程度、その説明内容等、質問株主が保有する資料等も総合的に考慮して、平均的な株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断をなし得る程度のものが要求されるものと解釈されるべきです。

なお、この説明義務に違反した場合には、決議方法の法令違反となります。

しかし、以下の場合には例外的に説明義務が発生しないため注意が必要です。

※例外的に説明義務が発生しない事項(314条ただし書)

 ①株主総会の目的である事項に関しないもの

 ②その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合

 ③その他正当な理由のある場合(会社法規則71条)

  ⅰ説明のため調査が必要な場合

  ⅱ説明をすることにより会社等の権利を侵害する場合

  ⅲ株主が実質的に同一事項の説明を繰り返し求める場合

  ⅳ説明をしないことにつき正当な理由がある場合
 

2.他の株主に対する招集通知漏れ

比較的決議取消事由として主張されることが多いのは、株主に対する招集通知漏れです。

こうした場合、自身に対しては適法な招集通知が発せられているが、他の株主に対する招集通知漏れを理由に訴えを提起することができるのでしょうか?

この点、決議取消しの訴えの趣旨は個々の株主の利害を超えて、公正な決議を保持する点にあります。

そして、他の株主に対する招集通知漏れであろうと決議の公正を害するおそれがあることは変わりありません。

また、もしその株主が適法な招集通知を受けて株主総会に出席したならば決議の結果は変わったかもしれず、このような可能性がある以上、他の株主にも決議の効力を否認する利益があるといえるでしょう。

したがって、他の株主に対する招集通知漏れを理由として訴えを提起することも許されると解すべきです。
 

3.取消事由追加の可否

株主総会決議取消訴訟において、その取消事由をいつまでに追加主張することが可能でしょうか?

口頭弁論終結時まで取消事由の主張が追加可能であるとすると、取消訴訟の出訴期間を制限した法の趣旨を没却することにもなりかねません。

そもそも、831条1項が訴え提起期間を3か月に制限した趣旨は、瑕疵のある決議の効力を早期に明確にすることによってその安定を図ることにあります。

しかるに、取消事由の追加を無制限に許すと、会社はその決議が取り消されるのか否かについて予測を立てることが困難になり、法的安定性を害することになるでしょう。

したがって、取消事由の追加も決議の日から3か月以内に行われなければならないと解すべきです(つまり、訴え提起時までに全ての取消事由の主張をしなければなりません)。
もっとも、決議取消事由を決議無効事由として主張して、株主総会決議無効確認の訴えを決議取消しの訴えの提訴期間内に提起していた場合、提訴期間経過後に決議取消しの主張をなすことは認められるものと解されています。

 

以上で、株主総会の決議取消訴事由及び取消訟に関する論点の簡単な解説でした。

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