弁護士葛巻のコラム

2021.06.02更新

弁護士の葛巻でございます。

この度ご縁を頂き、リンクパートナーズ法律事務所へ移籍する運びとなりましたので

ご報告させて頂きます。

今後は、ベンチャー企業法務について専門性を深めていく所存です。

引き続き、どうぞよろしくお願い致します。

 

投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2020.08.05更新

皆様、こんにちは。

弁護士の葛巻瑞貴でございます。

私事で恐縮ですが、この度、小笠原六川国際総合法律事務所へ移籍する運びとなりましたので、

ご報告致します。

今後は、MBAの知見を生かし、より一層企業法務に注力して参ります。

今後とも弁護士葛巻をよろしくお願い致します。

葛巻 瑞貴

投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2020.04.02更新

皆様、ご無沙汰しております。

赤坂見附で開業しております、弁護士の葛巻瑞貴です。

弁護士業務に従事する傍ら、東京都立大学(旧首都大学東京)の経営学修士経営学専攻課程(博士前期)に進学し、経営学を学んでおりましたが、

昨月、無事修了し、晴れてMBAホルダーとなりました。先生方の熱心なご指導を頂けたことで、成績優秀者で修了することができました。

忙しさもありましたが、ビジネススクールで学んだ知見や様々な方との出会いは非常に刺激的で、充実した2年間を過ごすことができました。

経営学(経営戦略論、組織論、意思決定論、マーケティング論、ゲーム理論等)、会計学、統計学、コーポレートガバナンス、コーポレートファイナンス等

多岐にわたる分野を徹底的に学ぶ機会を得ることができたのは、今後の弁護士人生にとっても大きな財産になったと思います。

これからは、MBAで学んだ知見を生かし、ビジネスモデルを検討する際には、リスクのみを指摘するのではなく、「じゃあどうすれば良いのか?」をご提案できる弁護士でありたいと思っております。

また、修士論文では、攻めのガバナンスと守りのガバナンスの調和という視点から、社外取締役に対する株式報酬交付の意義を論じました。

この分野については、まだまだ、法整備等が整っていない状況ですので、今後も議論動向を注視していきたいと思います。

 

なお、忙しさにかまけて更新が止まっていたブログ等も随時更新を続けて行ければと思っております。

 

コロナウイルスの件で、世間は混乱を極めておりますが、このような時こそ、冷静に状況を見定めて行動することが大切と思います。

皆様もお身体にはどうぞご自愛ください。

 

弁護士 葛巻 瑞貴

 

 

投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2018.06.29更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回のコラムは、株主総会決議が取り消された場合、それは遡及的に(決議時までさかのぼって)無効であったことになります。

この場合に生じる、会社法上種々の論点について簡単に解説を加えたいと思います。

 

1.代表取締役の法律行為と第三者の保護

取消判決の遡及効によって、当該株主総会で選任された取締役は当初から取締役でなかったこととなり、代表取締役もその地位の基礎となる取締役としての地位を失うため、同代表取締役がした行為は無権代表行為となります。

しかし、このように解して代表取締役が行った法律行為を無効としてしまうと、株主総会決議の瑕疵の存在を知らずに取引関係に入った第三者の保護に欠け、取引の安全を著しく害することになります。

そこで、取引関係に入った相手方を保護する法的構成を検討する必要がありますが、表見代表取締役の規定(354条)を類推適用することが考えられます。

その要件は、①外観の存在、②外観の付与(帰責性)、③取消原因についての善意無重過失であるため、この要件を満たしている場合には、会社法354条の類推適用により、相手方を保護するべきでしょう。

 

2.取締役の責任

取消判決の遡及効によって、当該株主総会決議で選任された取締役は当初から取締役でなかったこととなります。

そうだとすると、その間に行った行為について取締役としての任務責任を負わないということになるのでしょうか。

しかし、実際に取締役として行動し、その任務懈怠によって会社や第三者に損害が生じたのに、これを責任追及する方法が不法行為責任のみに限られるのは、第三者の保護に欠けることになります。

そもそも、取消判決の遡及効は法的擬制に過ぎずないと考えられており、実体としては真の取締役が行動していた場合と何ら異なるところはないのです。

そうだとすれば、事実上の取締役の地位にあったものとして、任務懈怠責任を認めることができると考えるべきです(423条、429条の類推適用)。

 

3.取締役の報酬・退職慰労金

取締役への報酬(退職慰労金)について議決した株主総会決議が取り消された場合は、取締役の報酬について必要な株主総会の議決が欠けることとなります。

そして、取締役の報酬請求権は株主総会決議時に具体化すると考えられる(361条)から、株主総会決議がないままでは取締役に報酬を付与することはできません。

それにもかかわらず、取締役は報酬を受けてしまっているから、報酬相当額は不当利得(民法703条)となります。

さらに、この場合は第三者の利害を考慮する必要がないから、絶対的に無効になると考えてよいでしょう。

したがって、取締役らは受けた報酬を返還しなければならなりません。

もっとも、会社も取締役の職務執行という役務の対価を受けています。

そして、報酬は職務執行の対価としての性格を有するのであるから、取締役から報酬の返還を受ければ、今度は会社側が一種の不当利得を得る結果となります。

そこで、取締役は自らが行った役務の価値を客観的に算定し立証することを条件として、相殺の抗弁を主張して、不当利得返還の一部又は全部を拒むことができると解すべきです(職務執行の対価にあたる報酬については「法律上の原因」があるとしても良いです)。

 

4.剰余金配当

株主への剰余金配当について議決した株主総会決議が取り消された場合、会社は、配当を受けた株主に対して不当利得返還請求(民法703条)をすることが考えられます。

そもそも、会社法が株主の利益に配慮して、剰余金の配当について厳格な手続を課した(454条2項、3項)趣旨に鑑みると、手続違反の剰余金配当は無効であると解するのが素直です。

この場合、取引の安全を考慮する必要がないことからも、絶対的に無効と解釈してよいでしょう。

したがって、会社の株主に対する請求は認められることになります。

 

以上で、株主総会決議の取消に基づく、種々の論点の簡単な解説でした。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2018.06.08更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回の会社法の論点解説は、株主総会のある議題に関する取消事由が他の議題の決議の効力に影響を受けるか、という点についてです。

Aという擬態について、何らかの取消事由が存在する場合、その取消事由がBという別の議題にも影響を与えるのか否か、その点に関して解説します。

 

Q.他の議題に関する取消事由が当該議題の決議の効力に影響を及ぼすか

A.そもそも、各議題は、各々別個独立の議題であり、株主総会は各々の議題に影響されることなく無関係に議決することができます。

そのため、原則として他の議題の取消事由は当該議題の取消事由にならないのが原則です。

しかし、例外的に、両議題(議案)が株主総会の目的事項との関係で密接な関連性があり、一方を審議する上で他方を検討、考慮することが必要・有益な場合であり、会社が現経営陣に都合の良いように議事を進行させることを企図して当該事項を株主総会において取りあげなかった等、特段の事情が存する場合には、他の議題(案)の取消事由も当該議題(案)の取消事由となる、という例外を示した裁判例があります。

このように、例外的に、ある議題の取消事由が別の議題に影響を及ぼすことは考えられますので、上記特段の事情の類型化、精緻化が待たれるところです。

 

以上で、本論点に関する解説を終わります。

株主総会決議取消訴訟、無効・不存在確認訴訟、株主総会の議事録作成や運営指導等、企業法務に関するお問い合わせは、弁護士葛巻までお願いいたします。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2018.05.02更新

皆様こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士葛巻瑞貴で(かつらまき みずき)です。

今回のコラムは、会社法120条の利益供与に関して、よく問題となる「株主の権利の行使に関し」という文言の解釈について簡単に解説します。

 

1.問題の所在

良く問題となるのは、株主に対して、その保有する株式を譲渡することに関する対価として、会社が当該株主に何らかの利益を供与した場合に「株主の権利の行使の関し」に該当するのかという点です。

 

2.株式の譲渡に関する一連の利益供与が「株主の権利の行使に関し」に当たるか

例えば、株式の譲渡を断念することに関する対価を株主に支払うこと、第三者に特定の株主からの株式を譲り受ける資金を提供すること、特定の株主から株式を譲り受けること等が、「株主の権利の行使に関し」といえるのでしょうか。

株式の譲渡は株主としての「地位の移転」に過ぎないため、形式的には「株主の権利の行使に関し」とは認められないように思われることから議論があります。

この点、会社法120条1項の趣旨は、会社運営の健全性・公正さを図る点にあるため、「株主の権利」とは、株主として行使する全ての権利及びそれと密接に関連する行為を意味すると解されています。

そして、「権利の行使に関し」とは、会社が前述の「株主の権利」に関して利益を供与する目的・意図といった主観的認識を持ち、その行使・不行使に影響を与えることをいうものと考えられています。

具体的には、会社が財産上の利益を提供したことが、会社運営上の合理性があるか否かをもって判断することになります。

したがって、株式の譲渡に関する一連の利益供与は、現在の株主または将来の株主の議決権等の株主権の行使を回避する目的でなされる場合には、「株主の権利の行使に関し」に当たると解されます。

 

3.利益供与に該当した場合の法的効果

利益供与に該当した場合には、利益の供与を受けた者は、会社に当該利益を返還しなければならず(120条3項)、また、当該利益供与に関与した取締役等は、供与額を返還すべき義務を負いますので注意が必要です(同条4項)。

なお、刑事責任も存在します(同条970条)。

 

以上で、利益供与に関する「株主の権利の行使の関し」という文言の解釈についての簡単な解説でした。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2018.03.22更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまきみずき)です。

先日、取材を受けましたので、よろしければインタビュー記事をご覧ください。

下記リンクからアクセスできます。

インタビュー記事リンク

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残業代請求弁護士ガイド

不動産トラブル弁護士ガイド

 

 

投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2018.03.20更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回は、委任状にまつわる法的規制に関する論点を解説します。

 

1.委任状勧誘と利益供与

まず、会社から株主に、会社提案の議案に賛同するよう働きかけ、何らかの利益の供与があった場合に株主総会決議の取消原因を構成するのでしょうか。

この点、利益供与は、現行法上厳しく制限されている(120条、970条)以上、原則として全て禁止されるべきです。

もっとも、会社の慣行上の必要性から、形式的には利益供与に当たっても、それを一律に違法と断じてしまうと会社にとってあまりに不都合です。

そのため、例外的に違法とならない場合を認めざるを得ないのも実情ですので、どのような場合に違法となり、どのような場合に違法とならないのかの線引きが問題となるのです。

そこで、一般的な見解では、

①株主の権利の行使に影響を及ぼす恐れのない正当な目的に基づき供与される場合で(目的の正当性)、かつ、

②供与額が社会通念上許容される範囲の物であり(金額の相当性)、

③供与総額も会社の財産的基礎に影響を及ぼさないものであるとき(総額の相当性)

には許容される余地があると解釈されています。
 

2.委任状勧誘規制違反と株主総会決議取消事由

まず、 一般に書面投票の場合、株主総会参考書類の不交付、様式不備の議決権行使書面の使用等は、招集手続又は決議方法の法令違反として決議取消事由となります。

これに対し、議決権の代理行使の勧誘は決議前の事実行為であって決議の方法ではなく、勧誘府令は決議方法を規定した「法令」(831条1項1号)ではないので、委任状勧誘規制違反が直ちに決議取消事由にはならないと解されています。

しかしながら、会社が賛否欄の記載を欠く委任状用紙を用いたり、参考書類に重要な不実記載があったような場合等、委任状勧誘規制違反の結果、決議が著しく不公正と認められるときは、決議取消原因となります。

また、書面決議を義務付けられた会社(298条2項)がそれに代えて行う委任状勧誘(298条2項ただし書・会社則64条)については、委任状勧誘規制違反は、決議方法の「法令」違反となるため注意が必要です。

ただし、第三者が委任状勧誘規制に反した場合には、決議取消事由と解することはできません。
 

3.委任状勧誘規制違反と委任契約

委任状勧誘規制の違反が、委任契約の効力に影響を及ぼすのでしょうか?

委任状勧誘規制違反が委任契約の効力に影響を及ぼすと考えると、議決権行使が無権代理として無効(民法113条1項)となり得ます。

この場合、無効な議決権数を参入して決議の成否を判断したことは決議方法の法令違反として(309条参照)、決議取消事由となるでしょう。

しかし、委任状勧誘規制違反の勧誘がなされても、委任状勧誘規制は取締法規であり、委任状勧誘に係る効力規定でないことから、勧誘行為及び代理人の議決権行使自体は私法上有効であると思われます(会社提案の賛否の記載は招集通知を受けるまで株主は了知し得ないため、その記載を欠いても勧誘府令43条には反しない)。

もっとも、賛否の記載のある委任状の指示に反して代理行使がなされた場合、当該記載が代理権の客観的範囲を画するものであるから、このような議決権行使は無権代理として無効となります。

 

4.株主総会途中で届いた委任状による議決権行使の可否

ところで、株主総会途中で届いた委任状による議決権行使は認められるのでしょうか。

委任状の提出時期については明文の規定がないため問題となります。

そもそも、会社法310条1項の趣旨は、株主総会に出席しない株主に対し議決権を行使する機会を確保し、株主の意思をできるだけ会社経営には反映させる点にあります。

そのため、株主の議決権行使の機会をできるだけ確保すべく、決議時までに委任の意思が明らかになればよいものと解すべきでしょう。

したがって、株主総会途中での委任状による議決権行使も、決議前であれば許されると解釈されています。

 

以上で、委任状にまつわる諸論点の解説でした。

株主総会の指・議事録作成や会社法コンプライアンス企業法務一般に関するご相談は、弁護士葛巻にお任せ下さい。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2018.03.02更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回は、株主総会決議の取消事由について、若干の解説を行います。

株主総会決議に何らかの瑕疵があった場合、その決議は事後的に取り消すことが可能です(会社法第831条1項)。

そこで、今回のコラムではよく教科書等で取り上げられることの多い、株主総会決議の瑕疵・決議取消訴訟に関する論点を解説していこうと思います。

 

1.取締役の説明義務(314条)

まず、取締役は、株主総会において、株主からの質問に対して一定の説明をしなければなりません(314条)。

しかし、取締役が十分な回答・説明をせずに、かかる説明責任を果たしていないと思われる場合、株主総会決議を取り消すことが可能になるわけです。

ただし、取締役にかかる説明義務が生じるのはどのような場合を指すのか、取締役に説明義務が課されるとして、その説明の程度はどの程度の説明をすればよいのかが問題となります。

⑴事前の質問状に一括して回答した場合

まず、取締役が、株主から事前に提出されている質問状に対して、一括して回答した場合、取締役に説明義務違反を問えるのか、そもそも取締役に説明義務が生じるのでしょうか?

この場合には、取締役の説明義務違反は生じないものと解釈されています。

なぜなら、314条は株主総会の場で具体的な質問がなされた場合の規定だからです。

したがって、取締役に説明義務が生じるのは、株主総会の議場の場で株主から質問がなされた場合に限られることになります。

⑵説明義務の程度

それでは、議場において株主から質問がなされた場合、取締役が負う説明義務の程度はどのようなものなのでしょうか。

思うに、説明義務の履行といえども、全ての質問にすべからく回答しなければならないものではなく、株主が議題を合理的に判断するのに客観的に必要な範囲での説明をすれば足りるものと解するのが合理的でしょう。

実際上、全ての質問に対し、詳細に回答するのは現実的でないケースもありますし、このように解釈してしまうと株主の嫌がらせ的な質問を助長する結果に繋がりかねません。

したがって、説明義務の程度は、それが株主総会決議事項とされた趣旨、決議事項の内容、質問事項との関連の程度、その説明内容等、質問株主が保有する資料等も総合的に考慮して、平均的な株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断をなし得る程度のものが要求されるものと解釈されるべきです。

なお、この説明義務に違反した場合には、決議方法の法令違反となります。

しかし、以下の場合には例外的に説明義務が発生しないため注意が必要です。

※例外的に説明義務が発生しない事項(314条ただし書)

 ①株主総会の目的である事項に関しないもの

 ②その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合

 ③その他正当な理由のある場合(会社法規則71条)

  ⅰ説明のため調査が必要な場合

  ⅱ説明をすることにより会社等の権利を侵害する場合

  ⅲ株主が実質的に同一事項の説明を繰り返し求める場合

  ⅳ説明をしないことにつき正当な理由がある場合
 

2.他の株主に対する招集通知漏れ

比較的決議取消事由として主張されることが多いのは、株主に対する招集通知漏れです。

こうした場合、自身に対しては適法な招集通知が発せられているが、他の株主に対する招集通知漏れを理由に訴えを提起することができるのでしょうか?

この点、決議取消しの訴えの趣旨は個々の株主の利害を超えて、公正な決議を保持する点にあります。

そして、他の株主に対する招集通知漏れであろうと決議の公正を害するおそれがあることは変わりありません。

また、もしその株主が適法な招集通知を受けて株主総会に出席したならば決議の結果は変わったかもしれず、このような可能性がある以上、他の株主にも決議の効力を否認する利益があるといえるでしょう。

したがって、他の株主に対する招集通知漏れを理由として訴えを提起することも許されると解すべきです。
 

3.取消事由追加の可否

株主総会決議取消訴訟において、その取消事由をいつまでに追加主張することが可能でしょうか?

口頭弁論終結時まで取消事由の主張が追加可能であるとすると、取消訴訟の出訴期間を制限した法の趣旨を没却することにもなりかねません。

そもそも、831条1項が訴え提起期間を3か月に制限した趣旨は、瑕疵のある決議の効力を早期に明確にすることによってその安定を図ることにあります。

しかるに、取消事由の追加を無制限に許すと、会社はその決議が取り消されるのか否かについて予測を立てることが困難になり、法的安定性を害することになるでしょう。

したがって、取消事由の追加も決議の日から3か月以内に行われなければならないと解すべきです(つまり、訴え提起時までに全ての取消事由の主張をしなければなりません)。
もっとも、決議取消事由を決議無効事由として主張して、株主総会決議無効確認の訴えを決議取消しの訴えの提訴期間内に提起していた場合、提訴期間経過後に決議取消しの主張をなすことは認められるものと解されています。

 

以上で、株主総会の決議取消訴事由及び取消訟に関する論点の簡単な解説でした。

株主総会の決議取消等、決議の法的効力を争うことに関するご相談は、弁護士の葛巻にお任せ下さい。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

2018.02.26更新

皆様こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回は株主総会の議事運営に関して代表的な論点を整理したいと思います。

 

1.定款による代理人の資格制限

まずは、定款によって株主の議決権の行使資格を制限することができるのか否かについて検討します。

会社法310条は代理人による議決権行使を認めていますが、これを定款によって制限することは可能なのでしょうか。

例えば、代理人の資格を株主に限りことは許されるのか否かが問題となります。

そもそも、定款による代理人資格制限の趣旨は、株主以外の第三者が総会に参加することにより議事が攪乱されるのを防止し、会社の利益を保護する点にあります。

この趣旨からすれば、定款による代理人資格の制限は合理的な理由に基づく相当程度の制限であれば有効であると解されるでしょう。

もっとも、代理人による議決権行使は、株主に議決権行使を容易にし、その機会を確保するという観点から重要な権利であるから、会社利益が害される危険性が低く、議決権の代理行使を認めなければ事実上株主の議決権行使の機会が奪われてしまう場合には、定款規定の効力が及ばないと考えるべきです。

具体例で挙げた定款による代理人資格を制限したのは、株主以外の第三者によって株主総会が攪乱されることを防止するという合理的な理由があると思われます。

また、株主であれば代理行使が可能であり、全面的な制限がされているのではなく、相当程度の制限といえます。

よって、本件定款規定は有効と考えられますし、実際にこのような定款規定はしばしば目にするところです。

他方で、弁護士や株主が会社である場合の従業員など、株主総会の運営をかく乱させるおそれがおよそ存在しないと考えられる場合には、本件定款規定の効力は及ばず、かかる代理人に議決権を行使させないことは違法になると考えられます。

※(しかし、株式会社がその都度確認し個別具体的に検討するとなると、明確な基準がないままに実質的な判断を迫られ、その結果、受付事務を混乱させ、円滑な株主総会の運営を阻害するおれがあります。

よって、弁護士のような株主総会を攪乱するおそれのないと思われる者であっても、一律に議決権行使を拒否することは許されると解釈することも一定の理由があります。ここは解釈の分かれるところです。)
 

2.従業員株主を優遇する措置について

次に検討するのは、従業員株主を株主総会において厚遇することが適法とされるのか否かについてです。

例えば、従業員株主を優先的に入場させ、前列に着席させるなどの措置は、議事運営の方法(315条)として適切でしょうか。

⑴ 平等原則からの視点

そもそも、会社は同じ株主総会に出席する株主に対しては合理的な理由がない限り同一の取扱いをすべきであって、従業員株主を一般株主よりも先に入場させ、前列に座らせた会社の措置は合理的な理由がなく、適切とは言いがたいでしょう(109条1項参照)。

しかし、議事運営が違法となるか否かは、株主権の行使が妨げられ、株主としての法的利害の侵害があったか否かによって決せられるべきです。

そのため、決議方法の法令違反(又は著しく不公正)か否かの判断は、合理的な理由(必要性・相当性)があるか否かによって決せられることになるでしょう。

⑵ 議事整理権限からの視点

そもそも、議長は議事整理権限(315条)を有していますが、この権限は善管注意義務(330条・民644条)に沿って行使されなければならないのが当然の前提です。

多数の株主が参加する株主総会においては、合理的な審議を行うためには議場の秩序を維持することが必要であり、その一環として従業員に議事進行への協力を求めることも、相当な範囲にとどまるのであれば認められるものと解釈されています。

そのため、上記具体例の程度の措置であれば、議長の議事整理権限の範疇と解釈することも可能でしょう。

ただし、議長の議事整理権限も前述の通り、善管注意義務に沿って行使されなければなりませんし、不相当な権限行使は違法と解されます。

もっとも、従業員株主による「異議なし」等の発生が一般株主による質問や意見表明を抑圧する程度に至る場合には、相当性を欠く議事進行が行われたものとして取消事由を構成するものと考えるべきでしょう。
 

3.株主総会会場での動議の範囲

最後に、株主総会での動議の範囲について検討します。

決議事項の内容に関する動議として株主が提出できるのは、取締役会設置会社においては原則として議案の修正動議のみであり(304条本文・309条5項本文)、招集通知に記載のない事項を動議で議決することは同項に違反します。

これに対して、議長不信任、検査役の選任・会計監査人の出席要求(309条5項ただし書参照)、総会の延期・続行の提案等、議事進行に関する動議は、議事運営に関する手続的なものとして、会議の目的として予め株主に通知がなされていなくても、提出することができるため、同項に違反しません。

また、議事運営に関する事項のうち、議長不信任の動議は、議事の公正に関わるので、その動議が出た場合は必ず裁決しなければならないと解されています。

この場合、不信任の動議の対象とされた議長が、当該動議について議長を交代する必要があるか問題となりますが、

①議長自体は、議決権を行使するわけではないこと、

②議長が、具体的に不公正な取り扱いをした場合に決議取消事由とすれば、株主保護としては十分であること、

③不信任の動議の度に議長が後退しなければならないとすると、濫用のおそれがあること、

の3点からすると、議長の交代は不要であると解釈されています。

なお、株主総会会場で株主から株主総会目的事項について修正動議がなされた場合、議決権行使書面で会社側提案に賛成した票をどのように取り扱うべきかが問題となります。

この点、株主の修正動議により提出された議題・議案の要領が招集通知に記載されれば、議決権行使書面により議決権を行使した株主が異なる判断をした可能性はあるが、その点は、決議方法の法令違反として決議取消事由になると解すれば十分であり、議決権行使書面で会社側提案に賛成した票を無効とする必要はなく、会社側提案賛成票として扱うべきでしょう。

 

以上で、株主総会における議事運営に関する諸論点の解説でした。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

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