弁護士葛巻のコラム

2018.02.02更新

皆様、こんにちは。

青山、赤坂、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回の会社法論点シリーズのコラムは、株主提案権に関する論点をまとめて解説します。

 

 

1.株主提案権の範囲

そもそも、株主提案権の範囲をいかに解すべきでしょうか?

 

例えば、取締役会設置会社では、株主総会は招集通知において株主総会の目的事項とされた事項しか決議できないこととの関係から(会社法309条5項)、少数株主権の議題提案は株主総会の日の8週間前に行わなければならないとされています(303条2項後段)。

 

そして、取締役会設置会社では、株主の議題提案権の対象となる「株主総会の目的である事項」は、会社法及び定款で取締役会設置会社の株主総会の決議事項としているものに限定されています。

よって、これ以外の事項に関する議題提案権を行使することはできないことになります。

 

もっとも、「定款の一部変更の件」という議題提案と、例えば「○○を株主総会の決議事項とする」という趣旨の定めを定款に追加する内容の議案の要領を株主に通知することの請求を行い(302条2項、305条1項)、定款変更提案が株主総会特別決議(309条2項11号)で可決されることを条件に、○○についての議案提案を同時に行えば、1回の株主総会によって目的の決議事項を実現することができます。
 

 

2.議題提出権等(303条2項)の株式継続保有要件について

 

では、株主が議題提出権等を行使する際、303条2項の株式継続保有要件(取締役会設置会社であれば6ヶ月)をいつまで充たし続けなければならないか。

議題提出権の行使日と株主としての基準日が前後する可能性があることから問題となります。

 

この点、①議決権のない者に議題提出権のみ認めるのは不合理であるので、行使日が基準日よりも前の場合には、基準日を終期とすべきであり、

②保有期間の始期が行使日から遡って6か月前であることからすれば、その途中で基準日が到来したとしても終期は行使日までと解するのが妥当と思われます。

 

したがって、議題提出権等の行使日と基準日のいずれか遅い日まで株式継続保有要件を具備している必要があると解すべきです。
 

 

3.株主提案権の提案できる議題・拒絶事由

 

そもそも、取締役会設置会社においては、株主総会の決議事項は会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限定されるところ(295条2項)、株主総会の専決事項以外の決議事項を定款で取締役会の決議事項と定めた場合には、当該事項は株主総会の決議事項でなくなる結果、株主提案権の対象から排除されることとなります。

したがって、株主総会の決議事項について、取締役会で決議する旨の定款が定め(例:459条1項)のみが定められている場合には、当該事項は株主総会の決議事項でなくなるわけではないのに対して(よって、株主提案権の行使が可能)、当該定款の定めのある会社が、当該事項を株主総会の決議によっては定めない旨を定款で定めた場合には(例:460条1項)、当該事項は株主総会の決議事項ではなくなる結果、株主提案権の対象から排除されるのです。

この場合、株主提案を行うためには、後者の定款の定めを削除する旨の定款変更の株主提案も併せて行うことが必要となります。

 

※「実質的に同一の議案」(305条4項)の意義

 

なお、305条4項の「実質的に同一の議案」の意義についても、多少の議論がありますが、形式上は同一の議案であっても、前回に提案したときと、その背景や条件が異なり、提案の実質的な意味が異なっていると考えられる場合には、実質的に同一の議案とはいえないものと解されています。
 

 

4.株主の議題提出権等の行使を無視して、株主提案の議題・議案の要領が記載されていない招集通知の適否

 

そもそも、取締役は、本来、株主の議題提出権等に応じて、招集通知に議題及び議案の要領を記載する義務を負っているところ、この義務を怠った場合に招集通知自体が不適法となるとすると、他の議題・議案についても決議取消事由が生ずることとなり、必要以上の法効果を与えることとなると思われます。

 

そこで、招集通知自体は有効であると解した上で、株主の議題・議案を記載しなかったために、その議題が株主総会の目的とならなかったことに関しては、取締役に過料を課す(976条19号・2号)ことで対応するべきでしょう。

 

そして、その議案と異なる議案が決議された場合には、決議方法の法令違反として決議取消事由(831条1項1号)になることとして、その実効性を確保するべきです。

 

もっとも、議題を招集通知に記載しなかったことは、その議題が株主総会で決議できなくなるだけで、株主総会で決議された事項について決議方法に法令違反が生ずるものではないので、取消事由にはならないので注意が必要です。
 

 

5.書面投票制度と株主提案権

 

そもそも、書面投票を採用する会社では、議案がなければ株主は書面によって議決権を行使することができないから、議題のみの株主提案はできないものと解されています。

 

一方で、株主が株主総会の8週間前までに、取締役解任の議題とともに、Aを解任するという議案の要領を株主に通知すべきことの請求を行った場合には、これを受けた取締役は、当該議題提案を採用し、当該議案について株主総会参考書類に所定の事項を記載し、議決権行使書面には、A解任議案について賛否を記載する欄を設けなければなりません。

 

その場合、株主は、当該定時株主総会の会場で、A以外の取締役の解任の議案を提出することが可能になります。

なぜなら、株主は、株主総会の会場において、議題について議案を提出することができるところ(304条)、株主提案により取締役の解任が当該定時株主総会の議題となったからです。

 

そうすると、会場においてAに加えてBも解任するという提案がなされた場合、書面投票により議決権を行使した株主をどのように扱うべきでしょうか。

 

この点、書面投票を行った株主は、Aの解任議案については賛否の判断を行っているが、Bの解任議案については賛否の判断をしていないので、欠席(定足数に算入されず)又は棄権(定足数に算入される)と扱わざるを得ません。

しかし、欠席扱いとすると、定足数要件が緩和されている場合(341条参照)、株主総会に出席している比較的少数の株主の議決権によって解任等の決議が成立し得ることになって妥当でないため、棄権と扱うべきでしょう。
 

 

6.取締役会による会社提案の撤回-議場での株主提案

 

(※前提として、取締役会が議題・議案を事後的に撤回することは、業務執行行為の一環として、権利濫用等の特段の事情がない限り、許されます(298条4項参照)。)

 

取締役会設置会社は、株主総会の目的事項(298条1項2号)以外の事項について、決議することができません(309条5項)。

そのため、仮に、取締役会の決議によって既に招集通知に記載された会社提案を撤回したとすると、かかる議題・議案は株主総会の目的事項ではなくなる結果、株主は株主総会の議場においても、議案提案権(304条本文)を行使することができなくなってしまいます。

 

そもそも、309条5項の趣旨は、所有と経営の分離が予定され、株主が経営に関わらないことが想定されている取締役会設置会社においては、株主は招集通知に記載されている議題を確認してから出席するか否かを決めるところ、かかる議題以外の事項に関する議決を有効とすることは株主にとって不意打ちとなるからであるとされています。

 

そうだとすれば、一度招集通知において議題を株主総会の目的事項として記載したのであれば、株主は当該目的事項に関する検討・準備をすることができたのであるから、取締役会が事後的に当該目的事項についての議案を撤回したとしても、再び株主総会で当該目的事項に関する議案を審議することは株主にとって不意打ちとはならないものと思われます。

 

よって、309条5項の趣旨を没却することにはならないから、株主が議場において当該目的事項に関する議案の提案をすることは許されるべきでしょう。

 

以上が、株主提案権関連の論点の整理と解説でした。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

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