弁護士葛巻のコラム

2017.11.01更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士の葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回のコラムは、会社法論点シリーズの「他人名義による株式の引受け」という問題です。

これは、実務上よく扱うということではなく、純理論的な論点なのですが、結構混乱する部分なのでここで触れておこうと思います。

 

1.想定事案

さて、どういう問題かと言いますと、会社が株式を発行する際に、AがBの承諾を得て、Bの名義で募集株式を引き受けた場合、真の株主は名義人であるBか、それとも実際の払い込み(金銭の支払い)等を行っているAか、という論点です。

 

2.判例の見解

この点、判例は、法律行為の一般原則に従い、真の契約の当事者として申込みをした者(実際の申込み者=A)が引受人となり、募集株式の発行等の効力発生日以後は株主となると判示しています。

この判例の事案において、Aは募集株式の発行等をした株式会社の代表取締役であり、実質上の申込者がAであることを発行会社は当然に知っていた事案であり、引受人をAとする解釈で特に問題はありません。

しかし、発行会社が名義貸しについて知らず、申込者がBであると信じて募集株式を割り当てた場合にも、Aが当然に引受人・株主になるというのでは発行会社の期待に大きく反するでしょう。

 

3.従来の通説

また、従来の通説は、他人名義の株式の引き受けの場合は、実質上の引受人=Aが常に引受人であるとしつつ、株主名簿の対抗力ないし免責的効力により、会社が名義貸しについて知らない場合には、Bを株主として扱うことを許容し、結論の妥当性を図っています。

すなわち、会社法130条1項を適用し、同条項は、文言上は、株式の譲渡についての規定であるが、これは、株主名簿の効力一般について定めたものであり、およそ会社に対し株主であることを主張する全ての場合についての対抗要件を定めたものと解するのです。

その理由は、集団的法律関係の画一的処理という株主名簿の制度趣旨は、名義株の場合にも及ぼすことが妥当であると考えるからでしょう。

よって、会社が他人名義での株式の申込みがなされたことを知らない場合には、会社は名義人Bを引受人と扱えば足りると解釈されています。

 

4.現在の有力な見解

しかし、会社法130条は株式の「譲渡」に関する規定であり、設立時の株主の確定や募集株式の発行等は、いわば株式の「原始取得」の場面であり、株主名簿の記載とは無関係に会社に対抗できると考えるのがむしろ自然でしょう。

また、原始取得の場合には株主名簿の免責的効力は、少なくとも問題とならないといえます。

したがって、株式の原始取得の場合には、実質株主Aは株主名簿の名義書換をすることなく権利行使することが可能であると解釈することさえ可能で、上記従来の通説のように、会社法130条を適用して事案の妥当な解決を図るのは若干理論的整合性に疑問があります。

そこで、近時は、発行会社が名義貸しの事実を知らない事案では、発行会社はAとBのいずれが引受人であるかを選択することができる(Bが申込者であるとの外観を作出したA及びBは、信義則上、実質上の申込者がAであることを会社に対抗できない)と解する見解が有力です。

この場合、発行会社がBを引受人(株主)と認めた場合には、➀Aは株主名簿の名義書換(130条)をしなければ会社に対して株主たる地位を主張できないし、②譲渡制限株式の場合、Aが発行会社との関係で株主となるためには、発行会社の承認(136条以下)を得る必要があると解釈されます。

なお、この場合、名義書換や譲渡承認手続に協力する義務をBが負うか否かは、AB間の合意の解釈の問題でしょうが、通常は、名義貸しの合意をしたAB間で、Aが真の株主であるとの了解があると解されるため、Aが手続への協力を求めた場合、Bはそれに応じる義務を負うと解釈されると思われます。

 

以上が、他人名義での株式の引き受けという論点の解説でした。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

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