弁護士葛巻のコラム

2017.10.20更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊で弁護士をやっております葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

今回は、会社法106条の株主の共有について解説しようと思います。

実務上、株式の共有化が発生してしまうのは、高齢の株主が亡くなって相続が発生した場合、被相続人が有していた株式が相続人の共有となるのです。

実際上、よく起こりうる事例ですので、今回のテーマに選びました。

会社法106条では、共有株主の権利行使者を指定しなければ、共有株主の権利行使ができない定めとなっています。

そこで、まずは、どのようにして共有株主の権利行使者を定めるべきか、共有株主の権利行使の方法について述べたいと思います。

 

1.株式共有(106条)-共有株主の権利行使の方法

まず、株式が共同相続された場合、株式は自益権のみならず、共益権をも含むから、可分債権(民法427条)とみることはできません。

そのため、株式は共同相続人の準共有(民法264条)となるものと解釈されています。

そして、株式の共有者は会社に権利行使者を指定して通知する必要があるところ(106条本文)、権利行使者はどのように定めるべきでしょうか。

この点、共有者全員一致(同意)を要求するという見解も有力ではありますが、会社運営に支障をきたすおそれがあり、会社の事務処理の便宜を考慮したという同条の趣旨を没却してしまいます。

また、権利行使者の指定は共有物の管理行為に該当する(民法252条)と解釈するのが素直です。

したがって、共有部得tの管理行為と同様、共有持分の過半数をもって決すべきであると解すべきでしょう。

判例も同様の見解に立っています。

ここで、株式の準共有状態は遺産分割が終わるまでの過渡的なものであるから、共同相続人は議決権行使方法につき事前に協議する機会が全員に与えられることが必要となります。

よって、一部の不参加がやむを得ない事情による場合、参加の機会を与えても指定の結果が異なることは考え難い場合等に限り、共同相続人全員による事前協議を欠いた権利行使者の指定は有効となると解釈できますが、他方で、そのような事情が認められず、全く協議せずに権利行使者を指定し、議決権を行使した場合には、権利の濫用として、その権利行使は許されないと考えるべきでしょう。

もっとも、会計帳簿閲覧請求権の行使のみを行うなど、他の共有株主の潜在的持分を害するおそれがない場合には、協議を経ていなくても、権利濫用に当たらないと解することもできます。

なお、事前協議によって定められた権利行使者は自己の判断で株主としての権利を行使することができます。

そして、株主の共有者間で権利行使に関しての内部的合意があったとしても、会社に対してこれを対抗することはできないとされています。

しかし、共有持分の過半数の決定があれば、権利行使者は各共有者の指示に従い議決権を行使する(各共有者の指示が異なるときは不統一行使(313条)をする)義務を共有者の内部関係上負うことになります。

そして、権利行使者が共有者の指示に反した議決権行使をしたことにつき会社が悪意の場合には、そのことをもって会社に対抗することができる(当該議決権行使は違法であり、決議は取消事由を帯びる)と解すべきです。
 

2.相続と株主名簿の書換え

共同相続人が相続株式の権利を行使する前提として、相続による株式の移転を会社に対抗しるために株主名簿の名義書換(130条1項)を要するのでしょうか。

株式の譲渡等の場合、譲受人は株主名簿の名義書換が完了しなければ、自己が株主であることを会社に対して対抗(主張)することができません。

しかし、130条1項は株式の「譲渡」の対抗要件を定めるにすぎず、相続その他の一般承継とは無関係な規定です。

また、相続人は被相続人の法的地位を包括的に承継するのだから、「名義株主」という地位をも承継すると解すべきです。

よって、相続による株式の移転は名義書換をしなくても会社に対抗することができると考えるべきでしょう。

このように考えなければ、基準日後(124条)に相続が生じた場合、相続人は議決権を会社の同意を得なければ(124条4項)行使できなくなり、また、その他の権利もおよそ認められなくなってしまいます。

株主の意思によって左右できない「死亡」の時期によってこのような不都合が生じるのは妥当ではないでしょう。

また、名義株主(被相続人)は既に死亡しているから、譲渡と異なり、名義株主と承継株主との間で権利行使の重複が生じるおそれもありません。

なお、この見解に立つ場合、株主総会への出席・議決権の行使のような、会社法の免責規定がない場合の処理をいかにするかが問題となります。

この点、相続人が株主総会に出席して議決権を行使するには自己の権利を証明しなければならず、そのような証明をしない相続人に対して、会社が株主総会の出席や議決権行使を拒んだとしても、決議は違法の瑕疵(831条1項1号)を帯びることはないと解すべきでしょう。
 

3.106条ただし書の適用範囲

参考:会社法106条「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。」

共有者の過半数に基づく決定がない場合に、会社の方から権利行使を認めることができるのでしょうか。

確かに、上記、106条ただし書を文言通り解釈するとこれを肯定できそうです。

しかし、権利行使者の指定は共有物の管理に属する事項であり、それについての決定は共有者内部の問題であり、会社が勝手にその関係を変更することは許されないでしょう。

また、仮にこの点を肯定すると、会社の恣意的な運用を許すことになります。

したがって、共有株式の議決権行使の方法を共有持分の過半数による決定を要すると解するのであれば、各共有者が議決権を行使することもまた、共有持分の過半数の決定がない限り、たとえ会社が同意しても行うことはできないと解すべきです。

結果として、各共有者が議決権を行使することもまた、共有持分の過半数の決定がない限り、たとえ会社が同意しても(106条ただし書が適用されないため)行うことができません。

逆に言うと、共有持分の過半数の決定があれば、会社の同意を得て各共有者が議決権を行使することができることになります。

また、議決権とは異なり、違法行為是正のための株主訴権(828条・831条等)などは、保存行為(民法252条ただし書)の性格をもち、本来は共有者1人により行使できるものであり、会社法106条は会社の事務処理上の便宜のために権利行使者による行使を要求しているに過ぎないから、会社が同意すれば、共有持分の過半数の同意がなくても各共有者が訴えを提起できると解釈されるでしょう。
 

4.訴訟提起における権利行使者の通知

権利行使者が未確定にもかかわらず、ある共有者の権利行使を会社が認め(106条ただし書)不当な決議が成立した場合(前述のようにこのような権利行使は106条ただし書に反し、取消事由を構成する)、他の相続人は株主総会決議取消訴訟等を提起できるのでしょうか。

この点、訴訟提起も会社に対する権利行使の一種であり、実質的にみても会社運営の便宜を図った同条の趣旨が及ぶものと解されます。

したがって、この場合も106条本文に基づき、権利行使者の指定・通知をなす必要があり、これがない場合は、会社の同意(106条ただし書)がなされない限り、原告適格を欠くこととなります。
しかしながら、共有株式が発行済株式の全部又は過半数を占めているため、本来成立するはずのない決議が成立したような場合には、会社は一方で権利行使者の指定・通知をしなければ成立し得ない株主総会決議の成立を主張しつつ、他方で、権利行使者の指定・通知がないことを理由にこれを争うことは、防御権の濫用もしくは信義則違反として、原告適格が肯定される特段の事情があるといえると思われます。

 

以上で、株主共有に関する種々の論点の解説でした。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

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