弁護士葛巻のコラム

2017.09.15更新

皆様、こんにちは。

赤坂、青山、渋谷近郊の弁護士葛巻瑞貴(かつらまき みずき)です。

本日のコラムは、会社法論点シリーズの第2回です。

内容は「法人格否認の法理」です。

 

1.そもそも、法人格否認の法理とは?

法人格否認の法理とは、法人格が法律の適用を回避するために濫用されたり、あるいは法人格が全くの形骸にすぎない場合に、具体的な事例において、会社がその構成員または他の会社と独立した法人格を有することを否定する法理です(当該事例についてのみそのような処理をします)。

すなわち、会社は法人であり(会社法3条)、会社自身が権利・義務の主体となるのですが、逆に言えば、会社が負担した義務を他の者(例えば、株主や代表取締役等)が負うことはありません。

しかし、この原則を貫くと、かえって、正義・公平の原則に反する結果が生じる場合があります。

例えば、会社の実質が全くの個人企業であるような場合であり、会社の取引相手からすればその取引が会社としてされたのか個人としてされたのか明らかでないような場合や(形骸化事例)、法人格を意のままに利用している株主が、違法・不当な目的のために法人格を濫用している場合です(濫用事例)。濫用事例の典型は、強制執行を免れまたは財産を隠匿する目的で別会社を用いる場合が挙げられます。

このような場合、会社という法人各を否定し、会社とその株主や他の会社を同一視することによって、妥当な処理を図るべきでしょう。

 

2.法人格否認の法理は認められるのか?

それでは、この法人格否認の法理は法解釈として認められるでしょうか?

法律上はこのような処理を認める明文規定はありません。

しかしながら、会社に法人格が付与されるのは、会社が社会的に存在する団体であり、権利義務の主体として認めることが国民経済上有用だからです。

そうだとすれば、法人としての実体がないような場合(形骸化事例)、や法人格が濫用されている場合(濫用事例)には、法人たる会社の形式的独立性を貫くと正義・衡平に反する結果となるため、法人格を否認し、会社と社員とを同一視するべきです。

このような価値判断から、法律上の規定はないものの、判例上、法人格否認の法理は古くから認められています。

 

3.上記二類型の特徴・判断要素

以下では、法人格否認の法理として、類型化されている、「形骸化事例」、「濫用事例」について、その特徴と法人格否認の法理適用の判断要素を解説します。

⑴形骸化事例の場合

形骸化事例は、法人とはいうものの、実質は社員の個人企業や親会社の一営業部門に過ぎないような、社員と会社に実質的・経済的な一体性が認められる場合を指します。

具体的には、

①事業活動混同の反復・継続

②会社と社員の義務・財産の全般的・継続的混同

③明確な帳簿記載・会計区分の欠如

④株主総会・取締役会の不開催

などといった、強行法的組織的規定の無視等の諸般の事情を総合的に考慮して、会社と社員等の個人との一体性を判断するべきとされています。

 

⑵濫用事例の場合

濫用事例とは、会社の背後にあって支配する者が、違法不当な目的のために会社の法人格を利用する場合を指します。

具体的には、

①背後者が会社を自己の意のままに道具として用い得る支配的地位にあって、法人格を利用している事実(支配の要件)に加え

②違法な目的という主観的要素(目的の要件)

も必要となります。

 

以上、法人格否認の法理でした。

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投稿者: 弁護士葛巻瑞貴

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